東京スカイツリーを彩る「江戸紫」の魅力とは

東京スカイツリーを彩る「江戸紫」の魅力とは 建造物
東京スカイツリーを彩る「江戸紫」の魅力とは

東京スカイツリーを彩る「江戸紫」の魅力とは

2012年春、東京都墨田区に誕生した新たなランドマーク「東京スカイツリー」。その魅力のひとつが、日替わりで楽しめる2つのライティングデザインです。「粋(いき)」と「雅(みやび)」という和のテーマを掲げ、現代的なデザインと日本の伝統色が見事に融合しています。

中でも「雅」を象徴する色が、日本の伝統色である「江戸紫(えどむらさき)」です。この記事では、江戸紫の由来や文化的背景、そして東京スカイツリーにおける演出についてご紹介します。


紫色(パープル)の文化的な位置づけ

紫は、赤と青の中間にあたる寒色系の色で、虹の中でもっとも波長が短い光(約380〜430nm)に位置します。これより短い波長は「紫外線」と呼ばれ、肉眼では見えません。

紫色は、古来より高貴な色とされてきました。飛鳥時代、聖徳太子が制定した冠位十二階において、紫は最上位である「大徳」の冠の色とされ、権威と知性を象徴する色でした。


江戸紫(えどむらさき)とは?

江戸紫とは、江戸時代に生まれたやや青みがかった深い紫色のことです。染料は「紫草(むらさきそう)」の根(紫根)から抽出されるもので、当時は薬効があるともされ、武士たちが病よけや気合い入れのために鉢巻として巻くこともありました。

歌舞伎との関係

江戸紫が庶民の間で一気に広まったきっかけは、人気歌舞伎演目『助六由縁江戸桜』に登場する主人公・花川戸の助六が、江戸紫の鉢巻をしていたことにあります。これが粋な江戸っ子の象徴として受け入れられ、町人文化にも深く根付きました。


東京スカイツリーの「雅」ライティング

東京スカイツリーのライティングを手がけたのは、照明デザイナーの戸恒浩人氏。日替わりで点灯される2つのテーマ「粋」と「雅」は、それぞれ異なるコンセプトで構成されています。

「雅」:江戸紫を纏う美しい衣

「雅」では、スカイツリーの鉄骨構造を、あたかも織物のように繊細な着物の衣に見立て、江戸紫をベースにした照明が全体を優雅に包みます。控えめながらも深みのある色彩は、現代の東京に生きる日本の伝統美を象徴しています。


江戸紫が象徴するもの

江戸紫は、単なる色ではありません。それは「粋」と「雅」を併せ持つ、江戸の精神そのもの。東京スカイツリーにこの色が採用されたことは、単なる美しさだけでなく、地域文化へのオマージュでもあるのです。


まとめ

東京スカイツリーの「雅」を彩る江戸紫は、江戸文化の香りを今に伝える、粋な演出のひとつです。夜空に浮かび上がる深い紫の光は、日本の歴史と美意識を現代に語りかけてきます。

次にスカイツリーを訪れるときは、ライトアップの色にぜひ注目してみてください。そこには、日本人の美意識と、江戸の粋が静かに息づいています。

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